【翻訳】絵を描くのに必要なスキルとは?
David Revoyさんによる、絵を描くのに必要なスキルについてのチュートリアル(ライセンス:CC-BY)の翻訳です。特定のソフトの話ではなく、もっと一般的な絵のスキル、画力の構成要素とそれぞれの磨き方についての内容です。
絵を描くのに必要なスキルとは?
はじめに
絵を描いてみよう、頭の中の想像からキャラを描いてみよう、と絵を学ぼうとした時に、どんなスキルを学べばいいのか全体像は掴みにくいのかもしれません…どう絵を学べばいいのか、というメールが私のところには数多く届いています。初心者は途方にくれることが多く、一般的な説明ページがないことに困っています。そこで、この問題への解決策としてスキルの一覧を作ってみることにしました。絵を描くこと、色を塗ることを上達させるために、知識を得て練習する必要のあるスキルのリストです。各項目ではスキルの「内容」、「必要な理由」、そして「どうしたら上達できるか」について、できる限り明確で簡潔に説明してみました。この全体像を把握できれば、特定のトピックについてサーチエンジンで検索し、チュートリアルを探すことも簡単になります。絵を描く技術を磨き、向上させたい人すべてにこの「地図」を提案します。私自身も、この全体像を使って、練習の計画を立てたり、弱い部分や足りない部分を振り返りたいと思っています。もし、あなたが0から絵を描く練習をしたいと思っているのなら、私からのアドバイスはこうです。まず最初はゼネラリストとしてすべての項目を少しずつ学んで基礎を理解して、それから特定の領域を1つずつ集中して学ぶことをおすすめします。
1.パースペクティブ
内容: 3次元のオブジェクトを、2次元の表面上に表現する技法
必要な理由: 紙という平面の上に描く時に、薄っぺらいものではなく、奥行きを再現するため
何を学べばいいか: パースペクティブグリッド、基本図形(四角、円など)のパース上での振る舞い、パース上でのプロポーションの維持について
2つの消失点(緑と赤)を使って構成された作品
2.プロポーション
内容: シーン内に存在するすべてのオブジェクトの間での、相対的な大きさの比率
必要な理由: 相対的な比率を尊重することで、何のオブジェクトであるかを見た人が認識できる
何を学べばいいか: 基本的なプロポーションの記憶、相対関係を簡単に記憶できるような符号化、プロポーションの語彙の構築
オレンジの線でハイライト表示:絵(左)とスケッチ(右)での基本プロポーションと相対関係
3.アナトミー
内容: 構造の勉強
必要な理由: 見た人が納得がいく見た目のものを描く(人間、動物、植物だけではなく、乗り物なども…)
何を学べばいいか: 関節、骨、筋肉、それらの仕組み、どう生きているか、部分の接続方法など…
左: 手の構造の習作、中央: 骨格ポーズの習作、右: 筋肉の習作
4.構図
内容: 視覚要素の配置とアレンジ
必要な理由: 見る人の目に対して心地よい見せ方をする、表現力を持たせる
何を学べばいいか: 絵の構成とフレーミングが意味づけと内容の読み取りやすさに与える影響について、よくあるレシピと基礎語彙
作品を描く前のサムネイル、構図のテスト
5.ライティング
内容: 明るさ、暗さを、色の明度で表現する
必要な理由: 光源があるという幻想を作る、影の投影、ボリュームを明らかにする、ムードを作る
何を学べばいいか: 明度、影の投影、材質、光の反射拡散、光の性質(水中、半透明、空気遠近法など…)
左: 光源によって様々な材質が表現されている、右: 光と影で、画面外のキャラクタを表現(影の投影)
6.エッジ
内容: シーンのオブジェクトの形とシルエットを切り分ける方法
必要な理由: 絵を読みやすくする、重なったオブジェクト、形を切り分けて、奥行きを出す
何を学べばいいか: 塗りのエッジスタイル(ハードエッジ、ソフトエッジ、ロストエッジ)、線画でのラインスタイル(重み、スピード、ゴースト)
左と中央: 塗りでのエッジ表現、右: 線画の太さ表現
7.色彩
内容: 効果的な色(色相、陰影、色味)を選ぶ技法
必要な理由: 作品に活気、雰囲気、感情的効果を追加する
何を学べばいいか: 色彩システム(単色、補色など)、色の感情への影響と古典的な意味づけの勉強
左上: この作品で使ったカラーパレット、3つの補色関係
8.ジェスチャ
内容: 動きやドラマティックなポーズを静止画で表現する技法
必要な理由: 静的な形に、命、流れ、表現とエネルギーを吹き込んで、アクションや動きを表現する
何を学べばいいか: 印象スケッチ、連続ドローイング、動きのあるものの習作。ウォームアップエクササイズ
左: 動物園でのペンギンのジェスチャ習作、中央: アクションジェスチャの習作、左: ポーズをテストするウォームアップスケッチ
9.スタイル
内容: 美学、好み、スタイル。基盤の基準(倫理的、歴史的、社会的、象徴的)、アートグループ、文化グループ、アート市場に依存することが多い
必要な理由: 見る人に魅力的に映る作品を提示する
何を学べばいいか: 自分の好み、文化的背景、所属するアートグループについて。作者として、また鑑賞者としての分析。
左:古典的白黒の肖像画、中央: 形式化して(奇妙な)キャラクタのペイントスタイル、左: 私のコミック風スタイル
10.コンセプト
内容: 絵は新しいコンセプト、アイデアや発想を抽象的に発展させて、新しいデザインを提案できる。絵を描くことはアイデアを生み出す全体的なエンジニアリングプロセスでもある
必要な理由: 楽しみのため、情報を伝えるために新しいビジュアル、物、キャラクタ、生き物を提案する
何を学べばいいか: 物事の仕組み、新しいものの作り方、アイデアの構成、偶然を楽しむこと、創造的プロセス
新しい種類の乗り物(左)、新しい種類のドラゴン(中央)、この絵を描くまで存在していなかった中世風の家(右)
11.コミュニケーション
内容: 絵は複雑で大量のデータを短時間で伝えることができる。「百聞は一見に如かず」ということわざはこのことをうまく説明している
必要な理由: アーティストは(意図的でもそうでなくても)見る人とコミュニケーションが取れる
何を学べばいいか: 絵の読み解き(絵に込められたメッセージ、非言語的な意味の解読)、意味のエンコード、ストーリーテリング、メッセージング
多くのメッセージを伝えてない落ち葉の絵(左)、一方で要素の組み合わせと表情で複雑なストーリーを語ることができる(中央)
新聞紙で出来たハゲタカ、といったシンボルの組み合わせ(右)は倫理的に問題のあるジャーナリズムについて深い意味を語り掛ける
結論: 意味ある幻想
上で取り上げた各原則での成功を混ぜ合わせることで、立体感、奥行き、質感、光、ジェスチャ、動きと命を、平面上に生み出すことができます。そうすれば絵を見た人は絵の世界にひたることができます。そしてアイデア、ストーリー、メッセージが伝わります。結局のところ、私は絵を描くことには、全体として一つの大きなスキルがあると思っています。意味ある幻想を作り上げる能力、です。この記事であげた一連のスキルから、知的能力(記憶力、管理力、決断力)だけでなく、感情的能力(感触、感情、無意識)も鍛えることができます。絵を描くことには、知識、観察力、想像力も必要ですが、何より、練習、練習、練習の積み重ねが必要です。絵を描くスキルは筋肉のようなもの(そして明らかに、ウエイトリフティングの本を読んだりビデオを見るだけでは筋力はつきません)なので、楽しんで絵を描いて、自分のユニークなスキルを作りあげていきましょう。