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David Revoyさんのウェブコミックメイキング最新版:「エピソード22 投票システムのメイキング」その3 ベタ塗り、陰影色塗り、最終調整

David Revoyさんのウェブコミックメイキング翻訳その3です。いよいよ色塗りと仕上げです!

その2:

sp-cute.hatenablog.comその1:

sp-cute.hatenablog.com

 7. 色ベタ塗り

今回は色付きのレイヤを線画の上に置いたままにする(普段は下に置く)ことに決めました。すべてをグループ化して、そのグループを「col」と名前をつけて乗算ブレンド設定にしました。こうしておくことでKritaの「R」ショートカットキーで正しい下地や色のレイヤーを選択することができます。(線画が上のレイヤーとして存在していると、線画レイヤーの方を選択してしまうことが多くありました)このちょっとした改善が気に入りました。

そしてカラーマップを実際のカラーパレットで置き換える作業をはじめました。昔ながらのベタ塗りだけのコミックであるかのように色を付けました。色は明るめ、かつ、彩度は高すぎないようにして絵にゆとりをもたせました。また鉛筆線に少し温かみのある色を乗せて、少しだけG'MicのSmooth[Nlmean]フィルタでぼかしました。

色準備のあとでこの工程をするのは退屈でした。ブラシより塗りつぶしツールを使う時間が長くなりました。綺麗にシャープにする「塗り絵」プロセスに何日も閉じ込められました。この工程ではアート的な表現が難しいものでした。

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下準備した領域をKritaでベタ塗り

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鉛筆の色付けとSmooth[Nlmean]フィルタでのざらつきのスムーズ化(複製したレイヤーにデフォルト設定で適用し、50%の不透明度でマージ)

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パネルの詳細。すべてがベタ塗りではなく、背景にはグラデーションを使用

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ベタ塗り後のページの概要(ページ1は陰影色塗り後)

8.陰影色塗り

すべての色の下地(前景/背景/空)をCtrl-Gでグループ化して、一番上にGrain Mergeの合成モードのレイヤーを追加しました。アルファ継承(クリッピング)をオンにして、127/127/127のグレーで塗りつぶされています。(Grain Mergeでは透明扱いになります)

それからこのレイヤーに対して陰影をつけます。光には暖色の明るい灰色、影は暗い寒色の灰色です。Grain Mergeは影をつくることも明るくすることも可能で、色の影響を与えることも出来ます。ただ「焼き込み」の影や露出過多で彩度が高すぎる光にもなりやすいものです。

私の陰影付けの方法はこのようなものです:最初に大きいエアブラシで大まかに陰影をつけます。次に表情のある毛筆ブラシで影をスマッジします。そして小さいブラシで詳細を描き込み、線画に存在しない詳細も作り出します。色の領域はアルファによって保護されているので、陰影付けはとても早くできました。予想より早くできた珍しい例です。

どうしてフランスやベルギーのコミックスタジオはこうしたワークフローを使うのかが理解できました。鉛筆、ペン入れは自分でしたあと、スキャンやクリンアップとベタ塗りはカラリストにまかせて、自分は陰影を担当します。クリンアップされて保護された線と形状の中から形を彫刻していくのは、早くできる作業で、見た目としても見返りが大きい部分です。陰影の作業でごちゃごちゃになっても、それでも結果が整然としたものに見えます。陰影にタッチを出して整然としすぎないようにするのは、デジタルでスムーズすぎる見た目を壊すのには必須かもしれません。

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シェーディングの第2パス、レイヤー階層が増えています

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ページ4の陰影付け。grain mergeのレイヤーの上のglobレイヤーで全体の色のムード(暖色、寒色)を追加しています

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特殊効果の彩色

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各下地に対するG'Micでのカラーグレーディング。少し大変でした。KritaのG'Micプラグインではお気に入りの設定の保存も再適用もできません。10ページ、各4レイヤーに対しての適用は午後中かかりました。

9. 色調整、ポストエフェクト

サブグループ(前景/背景/空)を平坦化してそれぞれにカラーコレクションをします。まだKritaではグループに対してフィルタを適用することができないので、平坦化しないとレイヤー階層全体へのカラーフィルタの適用のコントロールが難しいのです。他の機能を利用するために、注意深くレイヤー分割されたデータの柔軟性を失ってしまうのはつらいですが、必要なことです。

Grain mergeを使うことで彩度が焼き込まれた部分を修正するためにG'Micのcolor>color gradingフィルタを使いました。またカラーバンスと調整カーブで全体の色の雰囲気も調整しました。必要な部分についてはレイヤーの上に描き込んで修正を行いました。通常のブラシを不透明度を低くして、エッジを修正しました。

最終仕上げはレイヤー階層の最上部の3つのレイヤーで行いました。DOF(lightenモード、デプスオブフィールド効果、スフマート、煙、空気感)、FX(加算モード、強い光、輝き、特殊効果と直接光)、glob(Grainmerge、画像の色の統一感と映画的効果を出すためのグラデーション、ヴィネットボーダー、光源のコロナ)です。

公開する前に、さらに一番上に2つの調整レイヤーを追加しました。不透明度が低いレイヤーで詳細を強化するものと、暗い部分で黒が潰れるのを防ぐため明度と青チャンネルを上げるものです。カラーパスを少し明るくし、鉛筆の線画に少し青みを与えて呼吸する余地を与えます。このステップはとても苛立たしいものでした。Kritaでカラーコレクションを行うのは困難で、特に不必要な色の置き換えは難しいものでした。KritaにはHSV/HSY/クローマ調整はありますが、これはすべてのピクセルを対象にするものだけで、特定の範囲のピクセルだけを対象にすることができません。(例、黄緑を金色系の色に置き換える、赤みが強すぎる影だけを彩度を落とす、などの操作)

またカラーコレクションを各レイヤーに適用していくのも、雰囲気の調整に微妙な調整が必要で試行錯誤が必要な部分でした。グループに色調整を適用して、再帰的にサブレイヤーに適用できれば便利と思います。

またポストエフェクト(色収差、チャンネルをシフトして魔法の効果部分に微妙なバリエーションを出せる)を動的に上に追加したいと思ったのですが、このフィルタはG'Micのみに存在していて、レイヤースタックすべてをマージすることが必要になるものでした。遠い未来のための機能リクエストのアイデアが浮かびました。

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シャープフィルタをかけたレイヤーを40%の不透明度で10ページの上に置きました。Kritaでページを横に並べて表示するには10GBのメモリが必要でした。

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最終のページ8、陰影、特殊効果、シャープ化と文字入り

エピソード22の最終バージョンはwww.peppercarrot.comで読むことができます。

結論

論理的なワークフローを使うことは濃い体験で多くを教えてくれました。10ページにわたって、次のステップはよりよくなると信頼しつつ論理的なステップを適用していく根気を学びました。このワークフローは工業的なアプローチで、100%結果を再現でき、小さなチームにタスクを割り振ることもできるようなものです。小さいウェブコミックスタジオというアイデアを実験したいと思ったのです。

ただ一人でこの方法でコミックを製作するのは退屈でもあり、多くのステップは「ピクセルを掃除する」ことでした。機械的で制限が多いものです。これは私の絵やデジタルペイントの情熱の核と協調するものではありませんでした。

ただ論理的なステップによっていつもよりクリーン(かつ時には高速)な作業はできました。10ページという長いストーリーに対しては最良の選択だったのでしょう。

例えて言えば、このテクニックはピラミッドを作るのにひとつひとつ四角を積み重ねて、最後の完成を待つようなものでした。ピラミッドの土台が弱ければ(鉛筆の下絵、カラーマップの準備)最後に直すことは不可能で最後の四角も落ちてしまうでしょう。私の普段のグレースケールでのスピードペイント、色付け、最後の詳細作成という作業とは逆なのかもしれません。

次のエピソード(23)では、この経験に過剰反応してスケッチ、スピードペイントによる有機的なワークフローに戻ることはしないつもりです。同じステップを保ちつつ、もっと創造的な自由度の余地を加えたいと思っていて、アイデアもあります。それは次のエピソード23での挑戦になります。

読んでくださってありがとうございました!

( Note: Pictures and texts of this article are licensed under the Creative Commons Attribution 4.0 International license ; CC-By D.Revoy ).